2016年10月24日

『穂村弘の、こんなところで』対談収録

『穂村弘の、こんなところで』(著・穂村弘、写真・荒木経惟、KADOKAWA・刊行)
歌人、穂村弘さんの対談集が刊行されました。
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本書は資生堂の文化誌「花椿」の連載がまとまったもので、穂村弘さんが小説家や劇作家、俳優、デザイナー、学者など、さまざまな分野で活躍する方と対談し、「何かを作ること、表現すること、その分野で戦うことの秘密について訊いていく」というもの。

名だたる著名人に囲まれて、なぜ私が、という感じですが、私も「歌人・絵描き」として対談に登場させていただいています。
写真家のアラーキーこと、荒木経惟さんの写真も、「時代の人」を撮影しペイントをほどこす手法は毎回鮮烈。
私のときには、絵本『おむかえワニさん』とコラボレートしてくださっています。(目が飛び出ました)
対談をまとめて下さったのは、瀧井朝世さん。瀧井さんは数々の文筆家のインタビューを記事にするお仕事をされており、いつも敬意をもって深く対象の創造の根に迫る手腕がみごとだなと思って拝読していましたが、私の対談でも、散らばった内容をきりっとまとめて頂いていて、原稿を読んだときは驚きました。
装丁デザインは、対談にも登場の名久井直子さんが担当されています。拙作『桜の子』の装丁の打ち合わせでお会いしたときは、本書の対談内容そのままの職人的などっしりした佇まいに魅了されました。

穂村弘さんの対談は「その人の才能や、なぜその表現ができるのかの謎に迫る」という姿勢で展開されることが多いように思いますが、本書も「時の人」である方々に素朴かつ鋭い、直球変化球織り交ぜた質問で切り込んでおられます。
どの方の対談も滅法おもしろいですが、ミナ・ペルホネンのデザイナー、皆川明さんの対談など、魚市場でマグロをさばく仕事をしながらミシンを踏み、アサリを仕分けながらあの可愛いデザインを生み出す素地が生まれていた話など、意外性にあふれ、絵を描く方にとってはすごく刺激的かつ嬉しい内容ですよ。

ちなみに、対談の中で穂村さんが触れてくださっている、このブログの「あしたしんでもしあわせ」というタイトル。
穂村さんは昔からよくこの件についてはいろいろ言ってくださってましたが、穂村さんのみならず、けっこういろんな方が、私に会うとブログタイトルについて言及してくださるんですよね。
ブログのタイトルを決めたのはもうずいぶん昔のことですが、タイトルを決めたその瞬間のことはけっこう強烈におぼえています。
心の底から笑いがこみ上げて、おかしくってしかたない、という感じで、ひとり、めちゃくちゃ笑っていました。いったい、どういう心理状態だったのか謎ですが、「すごく正しいタイトルだな、これしかありえない」と思ったのでした。
「きょうしんでも」ではなく、「あしたしんでも」であるところに、自分の死生観がよく表れているように思います。
死ぬならば死を自覚して、よく死を味わいたい。
そんな思いからの「あしたしんでも」なのでしょう。
何年も前の自意識から生まれた言葉ですが、以後の人生でもこの価値感は変わらなさそう。
同様に、穂村さんとの対談でお話した内容も、私に関しては、自分の人生や環境の変遷によって変化する、ということのないお話をしていると思います。

さらにもうひとつ!
対談の中では「穂村さんに背後に城が見えた」という話をしていて、穂村さんが「あ、日本の城ね、洋風の城かと思ってた」というシーンがあるのですが、これ、とっさのことで否定できなかったんだけど、日本の城じゃないんです!
世界中の誰もが「どうでもいいわ」と思うことでしょうけれど、せっかくなので追記しておきます。
ではどんな城なのかというと、という話は、いつかどこかで機会があったら言うか書くかするかな? しないかな?

そんなこんなで、私はともかく、ですが、刺激的で豪華な「表現の秘密」が41対談。
あとから振り返ったとき、「今」という時代の文化を記録する貴重な対談集となりそうです。
ぜひぜひ、手にとってみてください。



posted by 草子 at 00:00| 本の仕事・著作